植物の栽培と「光」

光をぬきにして人間の暮らしが考えられないように、植物にとっても、光はなくてはならないものです。

植物の葉は、太陽の光を浴びることによって、空気中の炭酸ガスと土中から吸収した水を材料にして、炭水化物を作ります。これを「光合成」と呼びます。この光合成が充分にできてこそ、生長し枝葉がふえ、きれいな花が咲くのです。

光飽和値とは

それでは、どんな植物にも光をさんさんと与えてやればよいかというと、そう簡単なものではありません。ちょうどよいのは、植物が光合成を最も盛んにして、生長する状態です。この光の量を専門用語で「光飽和値」といいます。

多すぎると葉が傷む

光飽和値は、植物の光合成が盛んになる明るさであると同時に、これ以上光を与えても光合成量はふえないことを意味し、種類ごとに値は異なります。多すぎは不必要というだけでなく、植物にとっては葉が傷み、かえって生育障害を起こす場合もあるのです。光は多ければ多いほどよいと言えないのは、このためです。

補償点とは

一方、植物が生命を維持できる最低限度の光量を「補償点」といい、これは光飽和値よりもずっと低くなります。一般に補償点が高い植物は、0.2~0.3キロルクス位、低いものは、0.15~0.2キロルクス位です。

太陽光はすごく明るい

太陽の光の明るさは真夏の快晴時、戸外で80~100キロルクスもあります。これが、冬になると快晴でも20~40キロルクスに減ります。また、薄曇りの日だと、夏は40~50キロルクス、冬は10~20キロルクスです。

私たちが普通、本を読んだり字を書いたりするのに必要な光が0.2~0.4キロルクスですから、太陽の光は、比較にならないほど強力なのです。

ガラス越しの光は75%

ガラス(透明)をとおした室内の光度は、戸外の75~80%で、その上、ガラスが汚れているとさらに10%くらい減ります。

ガラスの傾斜角度によっても透過する量が変わります。温室の屋根の傾斜角度は30~40度がよいとされており、家庭の窓のように地面に垂直なガラスを透過してくる光の量は更に少なくなります。

ガラスから離れるとさらにダウン

また、ガラス面から離れるほど、光度が大きく減るということも、大切なポイントです。

植物が元気に育つ明るさ

夏は過剰、冬は不足

多くの植物にとって、夏の戸外は光の量が過剰、冬の室内は光が不足になりがちです。

例えばシクラメンは、冬、晴天時の戸外の光位がちょうどよいのですが、この時期家庭では、戸外の寒風を避けて室内に置き、ガラス越しの光しか当てることができませんから、ガラスをよく拭き、できるだけ窓に近づけて長時間日に当てましょう。プリムラなど冬~春に咲く好光性植物も同じです。

観葉植物の場合

観葉植物には10キロルクス前後(冬の曇り日位)がちょうどよいものが多く、温かい国の植物だからと、戸外の強光を当てたりしがちですが、真夏は建物の北側や木陰に置くとか、日除けをするなど、気をつけてやりましょう。

やむを得ず暗過ぎる場所に置く場合は、週に2~3日だけでも、光の当たる場所に移すと、ずいぶんちがうものです。光を当てることは、光合成のためだけでなく、植物体の組織を充実させて、病気や害虫から身を守り、草姿を整える効果もあるのです。

日照時間との関係

日照時間の長さの変化も、植物の生育や開花と密接な関係があります。日照時間との関係のしかたによって、植物は以下の3つに分けることができます。

短日植物

一日の日照時間が約13時間以下になると花芽ができ、やがて開花する性質のもの。

長日植物

一日の日照時間が13時間以上になると同じように花が咲くもの。

中性植物

日の長さに関係なく花が咲くもの。

短日植物には、人工的な対応が必要

自然開花を望む場合、長日植物は特に問題はありませんが、ポインセチアのような短日植物には、気をつけなくてはなりません。それは自然状態が短日になってくる頃には、多くの鉢植えは、寒さを避けて室内に移し、夜遅くまで電気がついていることが多いからです。短日植物については、遮光して人工的に短日状態を作ってやることが大切です。

また、短日・長日のどちらの植物も、短日処理、長日処理をすれば、自然開花の季節ではないときにも、花を咲かせることができます。