水やり
昔から「水やり3年」という言葉があります。これは、それぞれの植物の育ち方にみあった水やりはとても難しく、経験が必要だという意味です。極言すれば、水やりひとつで、咲くはずの花が咲かなかったり、形の整っていた鉢が不恰好に徒長したりもします。まさに、植物を生かすも殺すも水加減といえるでしょう。
水の役割は
植物は根から水を常に吸収し、その大部分を葉から空中に発散する「蒸散」作用をしながら生長しています。このため、植物は体の温度を一定に保つことができるのです。また、植物に必要な養分は、土中の水にとけて、吸収・利用されています。
土の中で新鮮な空気の通り道に
水やりは、このような本来植物の生育に必要な水を与えると共に、土中に新鮮な空気を導く効果もあります。つまり、水を与えると、土の中は一時的に多湿になりますが、間もなく余分な水は鉢穴から出て、水の通った大きな隙間には、新しい空気が入りこみ、植物の根に酸素を供給することになるのです。
水やりの目安
よく、水やりは何日に一度という表現がありますが、これはあくまでも目安です。その日の天候や室内の湿度、植物の種類や、用いる土の性質によっても水のやり方は変わります。
土の乾き具合を見るための方法
原則として水は、土がある程度乾いた時に、鉢底から流れるほどたっぷりと与えることです。鉢土の乾き具合を外から判断するには、次の三つの方法があります。
(1)地際を見る
土の表面、また、素焼き鉢の表面が白っぽくなったら乾きすぎです。土質によっても土の色はさまざまですので、手でふれて、乾き具合の感触をつかみましょう。
(2)持ち上げてみる
鉢を持ち上げてみて、思ったより軽かったら乾燥状態だとされます。これはあいまいな表現のようですが、ふだんくり返していると感じがつかめるようになると思います。
(3)葉をみる
折りづるらんの葉がかすかに丸まり、細い感じになったら水をやる、という方もいらっしゃいます。植物をよく観察していると水の具合がわかります。温度の下がる夜をこして、朝、葉のふちから水気がしみ出ていたら湿りすぎ、葉にややはりがなくなってきたら、土が乾いてきた時といえるでしょう。
湿りすぎると窒息状態に?
よく、水はきちんとやっていたのに枯れてしまったというお話を耳にしますが、おそらくこれは湿りすぎで根が窒息状態になり腐ってしまった可能性があります。夏は日に2~3回も与えたり、逆に冬は1週間に1回でも多いことがあるほど水やりには差がありますから、機械的にやらず、必ず土の状態をみる習慣をつけるといいようです。
また、水やりをひかえめにという表現は、1回の水やりの量を少なくするというのではなく、水やりの回数を減らすことを意味するのが一般的だとされます。
鉢皿の水に注意
この他に水やりの時の注意として、受け皿には決して水をためないこと、というのがあります。鉢土が湿ってしまい、根は呼吸ができなくなるからです。
塩類の浮積にも気を付けよう
また、土中の無機塩類は、上からの水やりで下へと流されますが、底水がたまっていては、土の表面から水が蒸散するに従い、溶解している塩類が地表近くに浮積し、植物の生育を害するようになります。
水をやる時間
植物が日中働くために必要な水は、原則として朝やります。これは、植物が光合成、養分運搬、体温調節などの仕事をしっかりとこなすようにするためにです。
真夏の炎天下や冬
気温の高い真夏の炎天下の水やりは、葉やけの原因などになりますから、ことに注意しましょう。やむをえず日中水をやる場合は、日陰に入れて与えます。冬は朝10時頃から昼までの間に、土の乾き具合をみて与えます。早朝と夕方は凍ることがあるので決して与えないように。また、冬の水やりはくれぐれもひかえめに。
葉水について
ふつうの水やりは葉に水をかけませんが、時には葉上から散水して、ほこりや葉ダニなどを流し去ってやります。ことに湿気を好むシュロチク、カンノンチク、シダ類などはたびたび水をかけて乾燥を防ぐとよく、暑さをきらうエビネやスズランなどは、半日陰で土の過湿に留意しながら水をかけ、気化熱を奪わせ、植物の葉はもちろんその周囲の温度を下げてやるとよいでしょう。
花弁を傷めないように
しかし、花をつけている葉に水をかけると、花弁を傷めることになるので避けましょう。また、東洋らんなどは病気が発生しやすいので、空気の乾いた日にさっとかけてほこりを流す程度にします。