貧血と鉄分(ミネラル)

貧血対策といえば、やはり、鉄分の摂取です。鉄は、ある種のたんぱく質(グロビン)といっしょになってヘモグロビン(血色素)をつくっています。体に含まれる鉄の量は3~5g程度しかなく、その約75%が血色素として血液の中に存在しています。

女性に貧血が多い理由

鉄が皮膚や粘膜、汗、髪、爪などから失われるのは1日0.5~1㎎とごくわずかですが、出血などがあると簡単に失われてしまいます。女性の場合は月に一回の月経で約30~60mlの出血があり、鉄として15~30㎎を失っています。女性に貧血やその予備軍が多いのは、失っているものをきちんと補っていないからという場合が多いようです。

鉄分を補給

一般的に食品からとっている鉄分が体内で吸収利用される割合は10%程度ですが、貧血のときにはその割合が20%程度に高まるといわれています。鉄分の多い食品を選んで補給するように努めましょう。

ただし、一度にたくさんとっても余分なものは利用されません。貧血が改善されるまでは、毎日必要な量をとり続けることがたいせつです。

銅も大切

そのほか、血液をつくるのに関係するミネラルとして銅があげられます。銅は肝臓などに蓄えられている鉄を動員する役割を持つといわれていますし、血液をつくる働きを促進する成分にもなるものです。けれども、銅はいろいろな食品の中に広く存在しているので、その不足によって貧血が起こることはほとんどありません。

カルシウムも

リンの多い食事は、せっかくとった鉄分の利用率を悪くするといわれていますが、食事中にカルシウムが多ければ、リンの影響が少なくなって鉄は吸収利用されやすくなります。カルシウムの多い食品も積極的にとるようにしましょう。

貧血とビタミン

腸が鉄を吸収するために必要

ビタミンCは、食品に含まれる鉄が体で利用されるためにはなくてはならないものです。食品中の鉄分は三価鉄というもので、そのままでは体内で利用できません。鉄分が腸から吸収されるためには、二価鉄というものに衣がえしなくてはならないのです。その手助けをビタミンCが演じています。また、造血に関係の深い「葉酸」というビタミンの働きを強めるためにも、ビタミンCの力が必要です。

「C」が豊富な野菜や果物を

ビタミンCは体内で生合成できないので毎日の食事からとらなくてはなりません。日常の食生活で欠乏症を起こすほどのビタミンCの不足はほとんどみられませんが、貧血の場合は食品中の鉄の利用効率をあげるためにも、多く含む新鮮な野菜や果物を積極的に取り入れることがたいせつです。

「ビタミンB12」と「葉酸」

正常な赤血球をつくるためになくてはならないのが、「ビタミンB12」と「葉酸」です。赤血球は、赤芽球というものが何回か分裂して数を増やしながら成熟してつくられたものですが、ビタミンB12や葉酸の不足は、この分裂に支障をきたします。でき損ないの赤芽球が残ってしまって、赤血球としての役割が阻害されます。このような状態を「悪性貧血」といいます。

極端な菜食主義

ビタミンB12は、胃から分泌される内因子という一種のたんぱく質と結ばれて小腸の下部から吸収されます。この吸収障害が起こると悪性貧血を起こします。ビタミンB12の摂取不足は、極端な菜食主義者の人にも見られることがあるそうなので、ビタミンB12を含む肉類、卵、牛乳などを毎日きちんととるように心がけたいですね。

葉酸は手早く調理

一方、葉酸は、酵母や肝臓、貝類、野菜類、豆類、卵黄などに多く含まれています。水に溶けやすく、長時間熱を加えると失われますので、調理上の注意が必要です。手早く調理するようにしましょう。

ビタミンB6の不足にも注意

ビタミンB6の不足にも注意したいところです。B6が足りなりと、血色素(ヘモグロビン)をつくるときに支障をきたします。血清中の鉄分の値が高くなりすぎて、骨髄、肝臓や腎臓などに過剰に鉄がたまって赤血球ができなくなり、低色素性貧血を起こします。ビタミンB6をとるとこの貧血は治ります。ビタミンB6を多く含む魚類、牛乳、豆類などを忘れずにとるようにしましょう。

よくかんで食べる!

食品中の鉄やたんぱく質など、血液の材料になる栄養素を効果的に利用するえで、胃酸はたいせつな役割を果たしています。胃酸は胃液の中に含まれていますが、分泌が少ないと食欲も減退し、必要な栄養量も消化吸収されにくくなってしまいます。食事のときによくかんで食べると胃酸の分泌がよくなるだけでなく、胃に負担をかけずに胃や腸をじょうぶに保つことにもなります。

食養生は根気よく続ける

食事性の貧血(鉄欠乏性貧血)は、偏った食生活の積み重ねが原因で生じたものですから、それを改善することがいちばんたいせつです。食事療法は即効的な効果が期待できるものではありません。毎日、毎食をたいせつに続けていかなければなりません。一時的に治療で良くなっても、食生活が元に戻ってしまっては、悪循環になってしまいます。根気よく続けるよう努力しましょう。

成人病の予防も

貧血の食事療法をすることを機会に生活環境を改善し、規則正しい食生活ができるようになれば、成人病の予防にもつながっていきます。